2022年2月2日にオープンした「大阪中之島美術館」。
堂島川に面した入り口に鎮座する巨大な猫の作品が存在感を放っていますね。
●大阪中之島美術館の猫はヤノベケンジ氏作の「SHIP’S CAT」
●「SHIP’S CAT」の作品に込められた意味
●ヤノベケンジ「SHIP’S CAT」シリーズについて
●ヤノベケンジ氏とはどのようなアーティストなのか
大阪中之島美術館の猫は「SHIP’S CAT」/ヤノベケンジ氏作
22年2月2日にオープンする大阪中之島美術館の開館記念「超コレクション展」のプレス内覧会に伺いました。漆黒の立方体の館の前では、ヤノベケンジさんの《シップス・キャット(ミューズ)》が、守り猫のように迎えてくれます。→(続 pic.twitter.com/qERZQGwNyj
— 美術展ナビ (@art_ex_japan) January 28, 2022
大阪中之島美術館の猫の作品は、現代美術作家であるヤノベケンジ氏の作品です。
ヤノベケンジ氏の作品「SHIP’S CAT(シップスキャット)」という船で旅をする猫をモチーフにした彫刻作品シリーズの一つで、「SHIP’S CAT (Muse)(2021)」という作品名です。
潜水艦や宇宙船にもついていけるスーツのオレンジ色は航海の安全を守る管制塔の色であり、厳島神社の朱色からきているそうです。
「SHIP’S CAT」の作品に込められた意味
15世紀半ばから17世紀半ば、大航海時代(大規模な航海が行われた時代)では、船に猫を乗せて旅をしていました。
人間と共に船に乗り、世界中を旅する猫は「SHIP’S CAT(シップスキャット)」と呼ばれていました。
ネズミから貨物や船を守り、疫病を防ぎ、船員の心を癒す友として愛されていたのです。
猫は日本では幸福を呼ぶ「招き猫」が普及していましたし、古代エジプトには猫の頭を持つ「バステト」という女神がいたりと、世界でも守り神のようにも扱われてきたことから、「SHIP’S CAT」は愛らしさのある守り神的存在になりました。
ヤノベケンジ氏が「SHIP’S CAT」に着目し作品として作り上げたイメージには、「人類のこれからの行く末を見守る存在」「人生の旅の守り神」という想いが大きいようです。
ヤノベケンジ「SHIP’S CAT」シリーズ
ヤノベケンジ氏の作品「SHIP’S CAT」、このシリーズが生まれたのは、鎌倉から博多まで日本各地にあるユースホステル「WeBase」からの依頼がきっかけでした。
はじめは福岡県の博多のユースホステルWeBaseのために作られました。
「猫は航海や冒険の遺伝子を受け継いでいて、人々にインスピレーションを与え続けている旅の象徴である」
日本で最初の人工港がある博多市である事からこのコンセプトを思いついたそうです。
混沌とした世界の守護者となることを願って制作された「SHIP’S CAT(2017)」の彫刻は、人々の安全と美しい出会いをもたらし、若者の航海を助けることができるとの事です。
ヤノベケンジ氏は地元博多小学校の生徒たちに彫刻のニックネームを付けるよう呼びかけたところ、数々の提案が寄せられました。その中から「ニャピー」が選ばれ、2017年9月18日に表彰式が行われました。
その後もヤノベケンジ氏は、京都や鎌倉や高松など、その土地土地に合わせた「SHIP’S CAT」をつくり出してきました。
ヤノベケンジ氏とはどんな人?
ヤノベケンジ氏は日本の現代美術作家で、京都造形芸術大学教授です。
こちらはTwitter投稿の写真で、左側に写っていらっしゃるのがヤノベケンジ氏です。
日本でのアート活動することの後押しをしてくれたアーティストのヤノベケンジ氏に、只今世界を周っている文化交流使の活動の近況報告。いつもニコニコ聞いてくれるのですごく励みになります。先輩! pic.twitter.com/3S4UZPYQWU
— 増田セバスチャン (@sebastea) December 23, 2017
ヤノベケンジプロフィール
大阪府立春日丘高等学校卒業。
1989年、京都市立芸術大学美術学部彫刻専攻卒業。
英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートに短期留学。
1991年京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。
1994年から3年間ベルリンに活動拠点を置き、現在は大阪府高槻市在住。
京都造形芸術大学教授を務め、同大学内のウルトラファクトリーのディレクターを務めている。
少年時代から特撮(特に、怪獣の造形)が大好きだったそうで、怪獣のイラストや造型を制作し、SF雑誌「宇宙船」などに投稿していたそうです。
アーティストとしてのデビューは1990年。
生理食塩水を入れたタンクの中へ鑑賞者が浸かり瞑想する、体験型作品「タンキング・マシーン」で第一回キリンプラザ大阪コンテンポラリーアワード最優秀作品賞を受賞しました。
その後、1992年水戸芸術館での個展「妄想砦のヤノベケンジ」で、放射能汚染された環境でも生き抜く機能のあるスーツ、サバイバル用の機械一式、それらを収納して移動する車両などを発表しました。
その後は「サバイバル」をテーマに機械彫刻シリーズの作品を制作し続け、日本のサブカルチャーとの関連で注目を浴びました。
社会性を持ちながらもキャッチーな印象を与える大規模作品を次々に手がけ、東京をはじめ各地で開催されるアートフェスティバルや芸術祭での展示機会も多いアーティストです。
まとめ
こちらの記事では、2022年2月2日にオープンした「大阪中之島美術館」の入口に鎮座する巨大な猫の作品について紹介しました。
大阪中之島美術館の猫は「SHIP’S CAT(シップスキャット)」というヤノベケンジ氏の作品です。
「SHIP’S CAT」とはもともと大航海時代に人間と共に船に乗り、世界中を旅する猫の事です。
ヤノベケンジ氏はユースホステルからの作品の依頼を受け、日本で最初の人工港がある博多市に飾る作品をつくる際に、「SHIP’S CAT」をモチーフとして猫の巨大彫刻を作る事を思いつきました。
「人類のこれからの行く末を見守る存在」「人生の旅の守り神」という想いをのせて、「SHIP’S CAT」はシリーズとして全国各地に作られています。
パット目をひく、一度見たらとても印象に残る「SHIP’S CAT」シリーズは見る側に何かしら感じさせる素晴らしいアート作品だと思います。
こちらの記事では、デザインとアートの違いについて紹介しています。アートってなんだろうと疑問に思った方は読んでみてくださいね。